翻訳コラム
2024.08.15
日本語からベトナム語への翻訳:難しさの理由と注意点
日本語からベトナム語への翻訳は、単語を置き換えるだけでは正確に伝わらないケースが多くあります。その背景には、文法構造・文化的な表現の違い・敬語や語感の扱いなど、言語特有の難しさが関係しています。
近年、在留ベトナム人の増加や日本企業のベトナム進出が進む中で、こうした「正確なベトナム語翻訳」の需要はますます高まっています。
本記事では、日本語からベトナム語への翻訳が難しい理由実際の翻訳・依頼時に注意すべきポイントまでを分かりやすく解説します。
Index
まずはここから!ベトナム語の基礎知識
まずは、あまり聞き慣れないベトナム語の基礎知識からご紹介いたします。
ベトナム語の基本情報
日本語からベトナム語への翻訳をご紹介する前に、ベトナム語の基本情報についてご紹介いたします。
ベトナム(正式名称:ベトナム社会主義共和国)は、東南アジアのインドシナ半島東部に位置する国で、人口は約9700万人です。人口の約86%を占めるキン族の母国語「キン語」が公用語として使用されています。
ベトナムは中国の歴代王朝からの支配やフランスによる植民地化、第二次世界大戦の日本軍による進駐等、非常に苦難の歴史が長い国です。そのため、ベトナム語には中国語やフランス語、日本語と似ている表現が多くあります。
ベトナム語には「3つの方言」がある
ベトナム語は、北部・中部・南部の地域により3つの方言に分かれます。
ベトナム語の標準語というと、一般的には首都ハノイを中心とした北部の方言を指すことがほとんどです。しかし、南部のホーチミンエリアには国営企業や外資系企業が集中しているため、ビジネスでは主に南部方言が使われるケースもあります。
ベトナム語は方言によって、話し方や発音が異なるのが特徴の1つです。特に中部の方言は他と比べて基本の単語自体が異なる場合も多く、ベトナム人同士でも全く理解できないことがあります。
ベトナム人の特徴については、以下の記事で解説されていますので、ぜひ併せてご覧ください。
【日本人と似てるって本当?!】ベトナム人の気質や国民性・特徴を徹底解剖!|Jinzai Plus
例えば、同じベトナム語でも以下のようにスペルや発音が異なります。
・日本語「大丈夫です(気にしないで下さい)」
・ベトナム語北部「không sao đâu(コホン サオ ドウ)」
・ベトナム語中部「nỏ răng mô(ノウ ラン モウ)」
また、北部と南部の方言は比較的似ているものの、違う面もあります。例えば「フォーク」という単語1つとっても
・ベトナム語北部「dĩa(ジア)」
・ベトナム語南部「nĩa(ニア)」
と名称が異なります。
このように、ベトナム語は方言によって表現フレーズが変わる、あるいは同じ単語でも全く意味の違う意味になる難しい言語です。
日本語からベトナム語への翻訳はなぜ難しい?
日本語とベトナム語の翻訳が難しい理由を理解するには、まず両言語の根本的な違いを知ることが大切です。
特に文法構造の違いは、翻訳精度に大きく影響する要素のひとつです。ここでは、日本語からベトナム語の翻訳は難しい理由について説明します。
文法構造の違い(SOV vs SVO)
日本語は「主語+目的語+動詞(SOV型)」の語順が基本ですが、ベトナム語は英語と同様「主語+動詞+目的語(SVO型)」を基本としています。
この語順の違いにより、単純に語彙を置き換えるだけでは意味が通じなかったり、読みにくい文章になったりする恐れがあります。
本語特有の語彙・文化・習慣表現の翻訳ギャップ
たとえば「〜させていただく」「お手数をおかけします」といった敬語・謙譲語の表現、日本語特有の「間」「空気を読む」文化などは、ベトナム語に直訳すれば違和感が残ることが少なくありません。
このような文化・習慣に根ざした表現を、ベトナム語ネイティブの言い回しに置き換えるという作業が重要となります。
敬語・ニュアンス・言いまわしの変換の難しさ
日本語で「恐縮ですが」「〜頂けますでしょうか」といった柔らかく配慮を示す言い回しは、ベトナム語でも丁寧語/尊敬語に当たる訳語を選択する必要があります。しかし、ベトナム語では敬語体系が日本語ほど細分化されておらず、「母語話者が違和感を持たない丁寧さ」を翻訳者が判断することが求められます。
用語・専門分野翻訳での課題(例:技術・医療・法務)
たとえば、技術マニュアルにおける「仕様」「公差」「耐久性」、医療文書での「術式」「合併症」、法務文書における「遵守義務」「損害賠償」など、日本語側で用意された ≪専門的語彙≫ をベトナム語で対応させるとき、共通に認知された訳語がない場合もあります。
このようなケースでは、「用語集の作成」「翻訳者との訳語確認」「ダブルチェック体制」の整備が不可欠です。
日本語からベトナム語へ翻訳する際の3つの注意点

上記でご紹介したように、日本語からベトナム語への翻訳は難易度の高い翻訳です。
しかし、しっかりと注意するべき点を押さえておくことにより、誤訳やスペルミスのリスクが低減します。
ここでは、日本語からベトナム語へ翻訳する際の注意点についてご紹介いたします。
ベトナム語の「時制」は厳密ではない
「過去」「現在」「未来」を表す時制の言葉は、ベトナム語は日本語のように厳密ではありません。また、英語のように時制による動詞の変化もありません。主語の次に置く言葉により、現在形・過去形・未来形を表すのが基本です。動詞の変化が少ないので、時制に関しては文法や文脈に注意して翻訳します。
外来語の「表記ルール」に注意
ベトナム語にはフランス語と英語由来の外来語が数多く存在します。発音は少し似ているものの、スペルが異なります。
【例1】コーヒーの場合
・フランス語:Café
・ベトナム語:Cà phê
【例2】フォントの場合
・英語:Font
・ベトナム語:Phông
外来語については、ベトナム語の辞書に掲載されている言葉に置き換えることがほとんどですが「salad」「Bluetooth」等の外来語はそのまま表記されていることが多くあります。
ベトナム語では「主語」が何より重要!
ベトナム語は主語がとても複雑です。一人称や二人称にあたる単語が多数存在する他、相手との関係性によって使用する言葉が変化することもあります。ベトナム語の翻訳を翻訳会社等に依頼する際には、原文の背景や人物の立場、目的や訳文を読む対象者等を正確に伝えることが大切となります。
日本語からベトナム語への翻訳:用途別の翻訳ポイント
ビジネス文書:取引先・お客様向けの敬語・謙譲語を先方に配慮したベトナム語に置き換える。
技術マニュアル:専門用語・図表・番号付き手順など、語彙チェックリストを作成し、訳語を社内共有する。
マーケティング資料:文化的背景(色・数字・言語)を踏まえて現地向けにローカライズ。表現やトーン、語彙を現地に合わせる。
このように、用途ごとに注意すべきポイントが異なるため、翻訳依頼前に「用途」と「想定読者」を整理しておくとスムーズです。
翻訳依頼時のチェックポイント
依頼時には、以下のような項目をチェックリストとして用いることをおすすめします。
- 翻訳者がベトナム語ネイティブあるか/日越・越日翻訳の実績があるか
- 翻訳分野(技術/医療/法務/マーケ)経験があるか
- 用語集があるか、または用語集を作成する体制があるか
- 納品後の校正(ダブルチェック)体制があるか
- 納品形式(Word・Excel・DTPなど)や納期・料金が明確か
このような項目を契約前に確認しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
日本語からベトナム語への翻訳の失敗事例
ここでは、日本語からベトナム語への翻訳の失敗事例を紹介します。
敬語の誤訳
失敗例:日本語「お手数をおかけいたしますが、〜していただけますでしょうか」を直訳し、ベトナム語でも敬語過多な語彙を重ねてしまい、受け手側に「しつこい/不自然」と受け止められた。
修正例:ベトナム語ネイティブの観点で「Xin vui lòng…」など適切な丁寧語に置き換え、言い回しを簡潔にして読みやすく改善。
語順ミスによる意味のズレ
失敗例:日本語「弊社が提出した仕様書のご確認をお願いいたします。」を語順そのままに訳し、ベトナム語で「仕様書 弊社 提出 ご確認 お願いいたします」のような違和感あり文章に。
修正例:語順をSVO型(主語 → 動詞 → 目的語)に整え、「Chúng tôi xin quý khách xem xét bản yêu cầu mà chúng tôi đã nộp.」のように自然な構文に修正。
このように、具体的な「間違いやすいポイント」を示すことで、読者自身の文書においても「このパターン注意だな」と実感を持ちやすくなります。
ベトナム語の正確な翻訳なら翻訳会社FUKUDAIにぜひお任せ下さい!
ご紹介してきたように、ベトナム語の翻訳は難しい面が多く、機械翻訳等を使っても正確な翻訳がされないことが多くあります。正確かつ確実な翻訳をご希望するのであれば、翻訳会社への依頼がお勧めです。
翻訳会社FUKUDAIでは、ベトナム語のネイティブ翻訳者と校正・校閲者から編成された翻訳チームが、文書の利用用途や目的、仕上げ品質等のご要望に応じて、各用途や分野の専門翻訳者が対応します。また、多岐に渡る分野での豊富な実績とノウハウを持ち、お客様のニーズに沿った最適な翻訳をご提供いたします。
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監修者

翻訳会社FUKUDAI 代表取締役
鈴木 宏基











